あぶない、自分の正義!


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正義とは、振りかざした途端にその意味を、その矜持を失うものだ。

時と場合によって、正義はまことにうざったく厄介な姿をみせる。

最近、こんなニュースがあった。

電車の優先席で老人に席を譲らない若者がその様子を自分で動画に撮りネットにアップしたという。

やりとりはこうだ。老人が若者にそこをどきなさいと言うと、若者は何故?と返す。老人は優先席だからと言う。若者はそういう人には譲りたくないと返す、とこんな感じらしい。そしてネットの炎上。

事情も真偽のほどもニュアンスもよく知らないのでこの件に関してはあまり言う気はないけど、世間によくあることで誰でも経験していることは、互いに自分が正しいと思っていて決して譲り合わないという状況だろう。

問題はやはり自分にこそ正義があると思っているところにある。相手にも言い分というか自分が正しいと思っているのかもしれないという発想や想像が欠如している。

自分に正義があると思えばどんなことも平気でやってしまうのだろう。以前こんなことがあった。渋滞している道路をバイクで走っている時にセンターラインを跨ぎながら渋滞の車を追い越して走った時のことだ。反対車線には全く車がいない状況で1台のバイクが向こうからやってきた。すれ違うその時強烈な衝撃が右半身を襲った。すれ違いざまに蹴られたのだ。右手から腰そして太ももにかけて蹴られていた。冬だったので履いていたオーバーパンツは見事に裂けていた。右手はしばらく痺れたままだった。あまりのことにあっけにとられたし、すれ違いざまなのでもはや追いかけることも出来なかった。自分が交通違反をしていたのは間違いないが、まさかの出来事だった。一歩間違えれば大きな事故になっていたかもしれない。勿論お互いにだ。多分、相手は一瞬で頭に血がのぼり正義の制裁を下したのだろうと想像した。通勤の道だったのだがその後二度とそのバイクを見ることは無かった。

もう一つ忘れられない事がある。それはとても苦い思い出としてこびり付いている。子供がまだ幼い頃、家族4人で自転車に乗って公園に遊びに行っていた時に1台のワンボックスカーが公園内の通路を遮って停車していた。僕はこんなところに車を停めるなんてふざけんなとばかりに車の横腹を蹴った。もちろん軽くへこまない程度だが。するとそれを見ていた車の持ち主が飛んできて思い切り怒られた。怒られて初めて自分が悪いことをしたことに気がついたのだ。妻も同様に僕を怒った。その様子は呆れてしまった感と一種軽蔑したニュアンスが混ざっているように感じて、僕は自分のしたことのあまりの間違いの大きさに驚愕した。妻に軽蔑されたかもしれない事と、子供達の前でそんなことをしてしまった自分の愚かさに唖然とし、同時に傷ついた。なぜあんなことをしてしまったのか?今にして思えば、僕を蹴ったあのバイク野郎と同じなんじゃないだろうか、ということだ。
ところが、妻や車のオーナーに非難され時に僕は戸惑っていたのだ。実は、なぜ正しいはずの自分が非難されているのかわからなかったのだ。一瞬ではあったが、理解できずに戸惑ったという事実に僕はショックを受けていた。車を蹴るなんてことは普通じゃ考えられないことだが、その時僕はこんな場所に止めたら誰も通れないじゃないかと憤慨していたのだ。その時、自分だけが正しいと思っていた。でもだからといって車を蹴るなんて有り得ないはず。なのに僕は憤慨していたものだから……つい…… 事の是非を見失った瞬間である。
その時の感覚が生生しく記憶に残った。
僕の恥ずべき事ベスト10のかなり上位を占める出来事であった。まだ上が有るのかと言われそうだが、その通り有るのである。有るのだから仕方ない。全くひどいものである。

それだからなおさら、間違えは誰にもあると思いたい。

特に相手が悪いと思った時に間違えは起こりやすいのだろう。

ネット炎上となった優先席のやりとりも、互いに相手の方が悪く自分にこそ正義があると頑なに思っていたようだ。
人は正義の御旗を手にした途端に、いわゆる人が変わってしまう。今まで弱弱しかった人でさえ、居丈高に相手を攻撃することが出来てしまうもの。いきなり無敵のバリヤーと最強の武器を身にまとったかのようになり、相手がどうなろうが関係なくなる。いや、関係ないというよりは相手を破壊してしまうことさえある。過剰防衛とか過剰正義とか言われているものだが、日本人に多くみられる気質だという。そう聞けば最近の週刊誌とかメディアの報道をみれば、ああそうかと納得してしまう。

自分が正しいと思ったその時が、一番危険なのかもしれない。


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