物語の少年の成長と舞台上の少年の成長がシンクロする妙!
原作は言わずと知れたあの傑作映画「リトル・ダンサー」
炭鉱町とバレエダンサーの対比が物語のエナジーを増幅させる。
不況の嵐と戦う炭鉱夫たちとバレーに魅せられたビリー・エリオット少年は、決してくじけない魂に於いて同質の覚悟を胸に秘めているのかもしれない。
映画の世界は、ビリー少年の夢を追い求める純粋な気持ちと勇気が、観る者の魂を震わせる。
舞台版はミュージカルである。物語の中のビリー・エリオット少年が、舞台上で歌い踊り芝居をする生身の少年とシンクロしていく様はドキュメントのようにリアルな体験を観客はすることになるのだ。映画とは全く違うテンションで物語は展開し、舞台特有の楽しさが弾ける。観客はさながら子を思う親であったり、アイドルを崇める少年少女のように一種異様な盛り上がりをみせる。舞台と観客が独特な一体感をもってエンディングまでなだれ込む。
冷静に評価すれば、前半のインターミッションまでのエネルギッシュでダイナミックな構成は観客の楽しさを頂点まで盛り上げてしまうため、後半の展開はいささか物足りなさは否めない。
そういった演出上の問題点はあるが、この舞台はビリーを演じる少年の舞台上での成長を観客が共感し、楽しみ、感動することを目指しているのだから、多少の事には目をつぶるのである。
輝く少年を観て、心を動かされないはずがないのである!
MY評価 ☆☆☆★★★ 2017公演 赤坂ACTシアター 脚本・歌詞:リー・ホール 演出:スティーヴン・ダルドリー 音楽:エルトン・ジョン 振付:ピーター・ダーリング キャスト/山城力(5人のビリーのひとり)、(以下ダブルキャスト)益岡徹、島田歌穂、根岸季衣