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映画「わたしは生きていける」今、戦争について思う!


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  舞台は現代、イギリスで勃発する    核爆弾による「第三次世界大戦」

大見得切った反戦映画ではない

思春期の少女、少年たちのひと夏のバカンスの始まりが、実にみずみずしいタッチで描かれるなか、突然の戦争のただ中に放り込まれ、無残に散る命を目の当たりにしていくことになる。

眩いばかりの川辺で一瞬だけ見せた少年の背中の傷跡は、父親からの日常の暴力にさらされている生活を匂わせる。唯一の心のよりどころの飼い犬を殺された少年が見せた思いがけない怒りの激しさは、少年の心の傷の深さを活写し、直後に空しく散っていく。

屈託のない明るくけなげだった弟君の死の描写は、あまりにも残酷だ。

更に、ピクニックのさなかの原爆の描写や、どこまでも幸福感に満ちた田舎の生活が突然の銃弾の嵐で破られるシーン等、全てのエピソードに異常ともいえる落差の激しさがあり、その激しさが戦争の本質を突いてくる。

悲しみの度合いも落差が効いていて、心に刺さる。

その瞬間、反戦の色合いを映し出す。

実は、この映画、突っ込みどころ満載で、いろんな否定的な意見が飛び交う。

思うに多分、ベストセラーとなったらしい原作は良く出来ているような気がするが、映画となると「落差の演出」に観客が付いてこれない程の思い切った展開なのだ。

ロマンスかと思えば、反戦映画?どっちなの?みたいな中途半端な印を印象与えてしまう危惧があるつくりは、やはり総体的な支持は難しかったようだ。

とはいえ、現在に於いて実にタイムリーな反戦映画になっていて、ディテールもとてもよく計算されていて全体的な印象と異なる細やかな演出が見事な作品だった。

そして、シアーシャ・ローナン演じるヒロインの少女は、自己嫌悪と自己否定の嵐を乗り越え、「悪いことは蓋をして、上を向いて進んでいくしかない。今がその時」と言い、戦争の残酷さをも正面切ってぶつかっていくサバイバルなタフネスさが美しい。

(WOWOWにてTV初公開)

MY評価 : ☆☆☆★★
2014年公開  イギリス  101min  原題 How Live Now
 監督/ケビン・マクドナルド
 キャスト/シアーシャ・ローナン 

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映画「特捜部Q Pからのメッセージ」絶望の果ての希望とは?

芳醇なワインは今やオリ(澱)が瓶の底に沈殿している

「特捜部Q檻の中の女」の感想で、芳醇なワインのような作品だと以前に書いた。

このQシリーズの1作目だ。2作目は「キジ殺し」で今回は3作目になり、作品世界も濃度を増し今では年代物の赤ワインの澱が瓶の底に沈殿しているかのようだ。もちろんいい意味で……。

3作目の刑事カールは、1作と2作の捜査で疲れ果ててしまい、ポンコツになりかけていた。今や助手のアサドが主導しカールが助手のようについていく。もともと心に深い傷を持ち神も仏も信じていないカール自身の心の闇が、今回のテーマに深く関わっていく。

原作は北欧の権威ある文学賞「ガラスの鍵賞」を受賞した「Pからのメッセージ」ということで、3作目の今作はとりわけ絶望の闇が深い。

ポンコツ刑事になり下がったとはいえ、元来の敏腕ぶりも発揮して犯人を追い詰めていくのだが、いかんせんポンコツ状態なので簡単に犯人の手に落ちてしまうところは観客の興を幾分削ぐ展開だが、その点以外は非の打ち所が無いほど素晴らしい。

カールは相変わらず無神論者なのかもしれないが、映画の終わりの方で涙ながらに歌う彼の讃美歌が胸を打つ。そして最後に一言、肯定的な言葉を残して突然終わるエンディングは、一筋の光と救いを暗示させ、深い余韻を残す。

MY評価/☆☆☆☆

2016/2017  デンマーク・ドイツ・スウェーデン・ノルウェー合作 112min

原題/Flaskepost fra P
監督/ハンス・ペテル・モランド 、原作/ユッシ・エーズラ・オールスン
脚本/ニコライ・アーセル

キャスト/ニコライ・リー・カース、ファレス・ファレス
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映画「二重生活」興奮の禁断尾行!

スリリングで刺激的な傑作

誰でもいい。誰かを尾行する興奮!

大学の哲学科の修士論文として教授のリリー・フランキーに勧められるままに尾行を始めてみた門脇麦ちゃん。哲学的尾行?らしい。

それじゃバレバレだろっていう幼い尾行はさて置くとして、自分と関係のない人を不特定的に任意に選んで尾行してしまうわけだが、「尾行する」という行為は見ているこちらの方もなんだかゾクゾクするような興奮と快感が伝わってくる。何故なら、人を尾行するということは、つまりこれは禁断の行いだからだ。言い換えれば、普通はやっちゃいけないこと、となる。
「尾行」という行為の特異性は、人の日常を覗く行為にある。日常には様々な秘密が潜んでいることが多いから、何かしら人に知られたくないことも見えてしまうことになる。やはり禁断の行いなのだ。

スリリングでエロい映画

門脇麦と菅田将暉のベッドシーンが無機質でセクシーさのかけらもないのは、意図的なのかもしれない。つまりこの映画のトーンがとってもセクシーでもっと言えば素晴らしくエロいからだ。セクシーで映画的なエロさを引き立てるためにも、セックスの快感との対比が必要だったのだろう。

ドキュメンタリータッチのようなカメラワークの演出も的を得て刺激的だ。スリリングでサスペンスフルな雰囲気を作ることに成功している。

この監督、ただ者じゃない。

 

MY評価 ☆☆☆★★★

2016年公開   126min

監督/脚本 岸善幸  原作/小池真理子

キャスト/門脇麦、長谷川博己、リリー・フランキー、菅田将暉

第 14 回ウラジオストク国際映画祭  
最優秀監督賞(Best Director)
最優秀女優賞(Best Actress)W受賞
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映画「三度目の殺人」誰も本当のことを言わない!

此処(法廷)では誰も本当のことは言わない。ここでは誰が彼を裁くのですか?


ハリウッドの裁判映画をどれ程観てきたことか。にもかかわらず、今まで全く知らなかった法廷審議の映画になっている。

もちろん本題は他にある。人間の語る真実の危うさと実際の真実との挟間で揺れ動く人間のドラマが本題である。

なぜ彼は殺人を犯したのか?

この疑問の答えは映画の中では用意されていない。

答えは観た人が自分の心の中に問うしかない仕掛けだ。

究極を言えば、どの答えも正解だ。

自分の欲望の為だけで殺人を犯したのか、人助けの為に人殺しをしたのか、殺してはいないが誰かを助けることが自分をも助けるという事の為にぬれぎぬを負ったのか。

謎解きの心理サスペンスの趣きで物語は展開していく。

役所広司の深度の深い演技は、謎を謎のまま深めてしまうのに十分である。

MY 評価 ☆☆☆★★★ 

2017  東宝  124min

原案/監督/脚本/編集  是枝裕和 

撮影/瀧本幹也、音楽/ルドヴィコ・エイナウディ、美術/種田陽平

キャスト  福山雅治、役所広司、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之

 

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映画「ザ・ウォーク」生きる意味を問いかける

 

ひたすら一途に、綱渡りに人生を、命を懸けた男の物語


今は亡き、ツインタワーと言われたワールドトレードセンターにワイアーを掛け、綱渡りをする。

あまりに突拍子もなく馬鹿げた思いつきが、いつしかそれはチャレンジとなり、見果てぬ夢は現実性を帯びてゆく。

ひとり、ふたりと周りの人々が彼の情熱の磁力に引き寄せられていく。

この物語は、1974年に実際に起った本当の話しだ

初めてそのニュースを聞いた時には一人の所業のイメージしかなかったが、映画を観ると成程こんなことはたった一人で出来るはずもなかったのである。

この映画のポイントは、何故彼等彼女は自分たちが犯罪者として逮捕されるかもしれないのに、最後まで協力を惜しまなかったのか?という事だろう。

協力者の一人は高所恐怖症である。何故彼は犯罪者になるどころか、文字どおり命を懸けることになってまで彼に協力したのだろうか?

そもそも主人公の彼は何故に命綱を使わない綱渡りをするのか?

そこに山があるからと言った高名な登山家の言葉を思い出す。この登山家は「Because it’s there」と言ったそうだ。文脈からだと「そこにエベレストがあるから」となるところを日本ではいつしか「そこに山があるから」になったという。エベレストという固有名詞が「山」になるといきなり哲学的な様相を帯びていくのは極めて日本的といえるが、でもどちらでもいいような気もする。そこに世界一高いツインタワーがあったからなのかもしれない。

この綱渡り師も周りの協力者達も、みんな何かに憑りつかれたかのように夢中になっている。ものすごく困難なことだからとても大変そうだが、同時にとても幸せそうだ。まるで困難だからこそ幸せだと言わんばかりに。目標は生き甲斐となり、達成した時、それは至福の一瞬となり、今までの苦労のすべてを凌駕するのだ。

馬鹿げているからこそ、際立って見えてくるものがある

人生に意味を求める必要なんかないのだろうか。

人生とはシンプルなものでいいのだろうか。

生きている充実感さえあれば、何をしていてもその人は幸せだということなのか。

何をの何は、ノーベル賞を獲るような研究でも、全く人の役に立たないことでも、何でもいいのかもしれない。

何故なら、ただの綱渡りだ。

もし失敗していたら、命を落とす上に更にただの愚かな犯罪者となり、馬鹿げた事件としていつしか忘れさられていくだけのこと。

しかし、結果はどうであれ彼等の挑戦は、確かに彼等を幸せにしたことに間違いはない。

そして、その辺りに、どうやら人生の秘密が隠されているような気がしてならないのでだ。

MY評価 ☆☆☆★★★

2015/2016  アメリカ   123min   原題/The Walk

監督・脚本   ロバート・ゼメキス

原作      フィリップ・プティ『マン・オン・ワイヤー』(白揚社)

撮影      ダリウス・ウォルスキー

キャスト    ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレー、

        シャルロット・ルボン

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映画「フォックスキャッチャー」人を動かす負のチカラ!

人に何かをさせるチカラとは?

人を突き動かすチカラとは

人生のエンジンの動力とは

何がそうさせるのか

コンプレックスとか

評価してほしいとか

誰かに認めてもらいたいとか

それも、特定のあの人にとか

人の心はとても脆く

いともたやすく壊れていく

そんな心がエネルギーとなって

人を動かすチカラとなり

人に何かをさせる

悲しい心は 悲しい何かを生み

哀しい心も 哀しい何かを生む

負のチカラはとても大きく

人に何かをさせてしまう

とでも言うのだろうか?

MY評価:☆☆☆★★★
2014年公開   アメリカ   135min   原題/Foxcatcher
スタッフ 製作・監督/ベネット・ミラー、脚本/E・マックス・フライ
キャスト スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ
第67回カンヌ国際映画祭 監督賞受賞/ベネット・ミラー
第87回アカデミー賞ノミネート  主演男優賞 /スティーヴ・カレル
                 助演男優賞 /マーク・ラファロ
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映画「アメリカン・スナイパー」戦争に意味なんかない!

戦争の中身って?

正義も、悪も善も、憎しみも絶望も、そして希望も、すべてが戦争の中身だ

主人公に感情移入できるし、主役のブラッドリー・クーパーの演技は最高で、

マッチョというよりデブった印象の身体の造形もとてもリアリティーがあったし、またひとつ、クリント・イーストウッドが人の心の闇を描くことに成功した。

反戦なのか?好戦なのか?とてもわかりずらい映画だけど、そここそがこの映画の存在価値で、真骨頂なのだろう。

何をどう考えたらいいのか分からなくなるほどだ。

だが、戦争に意味を持たせたその時から、戦争は欺瞞の塊となる、ということだけは確かだ。

正義も何もかもが……

戦争は、生き残った人間も、後からゆっくり破壊する。

そして、銃社会を支える精神は、深く複雑に、人体の毛細血管のように広大に隅々まで張り巡らされていく。

MY評価:☆☆☆☆
2014/2015年公開   アメリカ   132min   原題/American Sniper
製作・監督/クリント・イーストウッド
脚本/ジェイソン・ホール、編集/ゲイリー・D・ローチ
原作/クリス・カイル『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』
キャスト/ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー
2014年アカデミー賞ノミネート/作品、主演男優、脚色、編集、録音、音響編集
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映画「悪童日記」ラストに、唖然としてしまった‥‥

激動の時代を生き抜いてきたが…

生きる環境が極端に過酷な場合の子供は、どのようになるのだろうか?

まるでガラス越しに観察しているような気分になる映画だ。

生き抜くために、肉体と精神が痛みに慣れる訓練をする。

或る信念をもって実行していくが、内面のナイーブさが彼等の優しさと弱さだ。

彼等双子にとって、最も苦痛なことは…

ラストに彼等が自らに課す試練とは…

彼等の選択したことのあまりの厳しさに

しばし目を疑い

唖然としてしまった‥‥

MY評価 : ☆☆☆★★★
2014年公開 独/ハンガリー合作 111min
監督 ヤーノシュ・サース   原作 アタゴ・クリストフ(悪童日記)
音楽/ヨハン・ヨハンソン、 撮影/クリスティアン・ベルガー
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映画「紙の月」自分の心の中を覗いてみたくなる

  

主人公の梨花はいともたやすく超えて行く!

日常と犯罪の挟間のクレパスをサラッと超えて行くように見えた。

そんなに簡単でいいのか?

なんだか共感できないな‥‥

もっとなんか、あるだろう、そこには簡単に見えても簡単に超えることのできない何かが!

っという風に思いつつ観ていたが、気が付くと次第に梨花に同化していっている自分を発見してしまった。

この映画が非常に多くの支持を得た理由はいくつもあるだろうが、特筆すべきは二点。

ひとつは、違和感の感じ方。

梨花の感じる日常の中のちょっとした違和感の描写だ。この違和感の集積こそが梨花を犯罪へと走らせた正体なのかもしれない、と観客に思わせる細やかな演出がいい。僕たちは、わかるわかると思い、そしてそれがいつしか梨花の気持ちに共感させられていくのだ。

もうひとつは、爽快感。

物語の終わり方が、まるで優れた逃げ切り形アメリカ映画のように一気に観客を解放する爽快感だ。素晴らしい展開(原作)だし、映画の方の描写力も秀逸だ。

それにしても恐ろしいはなしだ。

自分も案外、越えられないはずの挟間を、実は簡単に何かの成り行きとかで、

ひょいっとばかりに越えてしまえるんじゃなかろうか?

と自問している自分を感じたときに…

はたして、自分の中に梨花と同じ「紙の月」を見てしまうのだろうか?

MY評価 : ☆☆☆☆
2014年公開  松竹  126min
監督/吉田大八 、原作/角田光代 、脚本/早船歌江子
キャスト/宮沢りえ、池松壮亮
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映画「特捜部 檻の中の女」大人のための最高級ワイン


「特捜部Q 檻の中の女」芳醇な香り豊かなワインのようだ。

「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の脚本とカメラ、どうりで同じテイスト。

何処をとっても一級品の出来栄えだが、それにしてもと思ってしまう。

どうしてデンマーク映画はこうも素晴らしい作品が次々生まれてくるのか?

正直に言って、日本映画のこの種の映画とのレベルの差が、あまりに大きいことに愕然としてしまう。

決定的な違いは、語り口のリアリティーのレベルの差なのだろうか?

それを形成するあらゆる要素の総合力の差は、歴然たるものがあると言わざるを得ない。

映画製作の環境の違いなのか?
予算も手間も時間も素材も、すべてが違い過ぎるということなのか‥‥

デンマーク製を最高級ワインとすると、ハリウッド製は飲み口のいい程良いワイン、日本製は低廉なテーブルワインといったところになってしまうことが悲しい。

いつか、こんな日本映画が観たい。

MY評価 : ☆☆☆☆
2015年公開  デンマーク  97min  原題/Kvinden i buret
監督/ミケル・ノルガード 、原作/ユッシ・エーズラ・オールスン、
脚本/ニコライ・アーセル、撮影/エリック・クレス
キャスト/カール・マーク、アサド
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映画「MAMA」見応えたっぷり、恐怖の愛情物語!

恐怖のママがやってくる!

愛の深さは、古今東西怨念の深さ

母性愛は、時として愛憎を培養する温床となるのだろうか…

強烈な母性愛は、まかり間違えると、

何を生み出すかわからない怖さがあるようだ。

この映画は「恐怖」によって、深い人間ドラマを浮き彫りにする。

演出、脚本、演技どれをとっても一級品!

恐くて見応えたっぷりの愛情物語。

ジェシカ・チャステインの演技はやっぱりアカデミー賞クラスなんだね

MY評価 : ☆☆☆★★★
2014年公開   スペイン/カナダ合作   100min   原題 Mama
原作/監督/脚本   アンディ・ムスキエティ
キャスト       ジェシカ・チャステイン
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映画「ライアンの娘」もう二度と味わえない、この空気感!

デビット・リーンとモーリス・ジャールのコンビ

もう、二度とこんなスケールの大きな映画を観ることはできないのか?

広大な自然をバックに、骨太なテーマと繊細な演出で描かれる世界は、デビット・リーン独自の世界だ!そこに、モーリス・ジャールの壮大でいてリリカルなメロディーが映画全体を支えているのだ。

何故だかわからないが、「アラビアのロレンス」とか「ドクトル・ジバコ」のような映画ってもう出てきていない。

単に、映画製作の環境の変化だけではないのだろうか?

やっぱり、唯一無二の才能って存在するのかもしれない。

この空気感、もう味わうことは出来ないのかもしれない。

そんな映画。

MY評価 : ☆☆☆☆
1970年公開   イギリス   195min   原題 Ryan's Daughter
監督     デビット・リーン
音楽     モーリス・ジャール
撮影     フレディ・ヤング
キャスト   サラ・マイルズ、ロバート・ミッチャム、ジョン・ミルズ、
       クリストファー・ジョーンズ
1970年アカデミー助演男優賞、撮影賞受賞
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映画「シベールの日曜日」忘れることのできない記憶!

たとえようもない静謐な世界に息をのむ!

アンリ・ドカエの織りなすモノクロの世界は、二度と忘れることのできない記憶となる!

リリカルでポエティックで、

そしてシリアスな世界は、

観た人の心に深く突き刺さる。

観てしまったら最後、

この世界に捕らわれる。

世界中にこの映画の捕らわれの身になってしまった人たちがどれだけいるのだろうか?

パトリシア・ゴッチは子役なのに危険なほどに魅力的だし、様々なシーンが特別な記憶として刻まれてしまう。

永遠のシネマ!

MY評価 : ☆☆☆☆★
1963年公開(東和) フランス  116min  
原題 シベール、或はヴィル・ダヴレイの日曜日(パリ郊外のヴィル・ダヴレイが舞台)
監督/脚本   セルジュ・ブールギニョン
撮影      アンリ・ドカエ
キャスト    ハーディ・クリューガー、パトリシア・ゴッジ   
1962年アカデミー外国映画賞受賞
1962年ヴェネチア国際映画祭  特別表彰
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映画「ハンナ・アーレント」自分の中にもある?悪の凡庸さ!

人はなぜ平然と巨悪を行うことができるのか?

答えはハンナ・アーレントが名付けた「悪の凡庸さ」!

巨悪とは特別な悪であり、特別な人間のみが行えるはず?

僕達とは関係ない事って思ってたのに…

どうも違う…らしい。

無関心、従順、平凡、普通、そんな当たり前の中から生まれてくる「悪の凡庸さ」とは?

観客は自分の心の中を覗き込むこととなり、

恐怖とともに自分の中の「悪の凡庸さ」の存在に気づくこととなる。

戸惑い、うろたえ、そして、恐れ、

ラストのハンナ・アーレントの「8分間のスピーチ」に感銘し、

すこしだけ、救われる

MY評価 : ☆☆☆★★★
2013年   独/ルクセンブルク/仏 合作   114min  原題 Hannah Arendt 
監督・脚本/マルガレーテ・フォン・トロッタ
キャスト/バルバラ・スコヴァ
2013年ドイツ映画賞     作品賞、主演女優賞受賞
2013年バイエルン映画祭   主演女優賞受賞
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棺桶映画「ハート・ロッカー」心の闇にようこそ!


イギリス女性監督からみたアメリカのイラク戦争映画

人間の深淵を垣間見てしまう、心の闇にようこそ!

私たちの全く知らない戦争の側面をダイナミックかつスリリングに描く。

垣間見えてきたのは人間の弱さか恐ろしさか‥‥

極限のスリル、恐怖の中に身を置くとは、どういうことなのか?

人はどうなっていくのだろうか?

戦争に於ける様々な問いを、この映画はひとりの爆弾処理専門の男を通して語る。

普通の生活を送っている私たちが知る由もないその心理を、ほんの僅かかもしれないが、確かに垣間見たような気にさせられる。

イラク戦争の実態を描くという側面も無論あるが、むしろ人間の心の闇に踏み込んでいくその様はサスペンスフルで、エンターテイメントとして見事に成立させてしまったところが、監督キャスリン・ビグローの手腕なのだろう。

当然のように、アカデミー賞を独占してしまった!

とにかく、面白い映画だ。

MY評価 : ☆☆☆☆
2008年製作   アメリカ   131分   
原題 The Hurt Locker (イラクの兵隊用語/行きたくない場所・棺桶) 
監督/キャスリン・ビグロー、脚本/マーク・ボール、撮影/バリー・アクロイド 
キャスト/ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー
2009年英国アカデミー賞  作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響賞、撮影賞
2009年米国アカデミー賞  作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響効果賞、録音賞