嫌な予感はあった。錦織圭が全米の一回戦で負けたのだ!
実は、直前の記者会見で、調子がいいと公言していたことが気になっていた。
だいたい怪我とかなんかで少し不安がどこかにある方が、うまくいくことの方が多いものだよね。
いいイメージがあると試合中にそれを追い求めがちになり、かえってうまくいかないことがある。
我々レベルでもよくあることだし、プロでさえ見かける展開だ。
更に、グランドスラムの初戦という非常に難しい状況でもあった。
どんな選手でも例外なく初戦はデリケートなものだし、更にグランドスラムともなればなおさらだ。
しかも、第4シードの選手の初戦にしてはタフな相手だったことも不安材料だった。
とはいえ、5セットマッチということもあり、負けることはないだろうと思っていたのも事実だった。
ところが蓋を開けてみれば、まさかの5セット負け。
あらためてテニスというスポーツの奥の深さを知らされることになった。
テニスに於ける自信とは、例えば試合中のたった一つのプレーで突然自信を失ったり、反対にどんどんと自信がよみがえってきたりするほどに揺れ動くような微妙なものでもある。
プロであってもどうやらそれは同じらしい。
明らかにこの試合の錦織選手は自信を失っていた。
いつもの自信に満ちた思い切ったスウィングが影をひそめていた。
マッチポイントがそれを象徴していた。空いたスペースの逆クロスのフォアンドがサイドを割ってしまう。
最初にボタンの掛け違いのような試合の入りから始まって、最後まで自分のリズムでプレーが出来なかった。
相手の異質なプレーとかみ合わなかったことが、相手選手の追う身の軽やかさから生まれる力の抜けた伸びやかなプレーへとつながり、方や錦織選手は反比例するように自信を失っていった。
世界で4番目の選手でもそうなるって、いったいテニスというスポーツはどういうものなのだろう?
とにかく言えることは、かくも恐ろしいスポーツだということだ。
だからこそ、その奥の深さに魅入られるようにして、巷のあらゆる年代の人たちを虜にしてしまうのかもしれないな。