もし、最愛の人を亡くし、ある時その人に瓜二つの人に出会ったなら、あなたならどうする?
思いがけない幸運を神に感謝するのだろうか?
けれどその幸運とはうらはらに、残酷な現実を思い出させることとなる。
もしかしたら、現実のその人を愛することは、死んでしまったあの人を愛することなのか、と…
愛する人の死を乗り越えることは、自分でも思いがけない程困難なことだ
自分でもどの位のダメージを受けているのか、わからないからだ。
涙はいつ流れるのか?
忘れたころにやってきたりする。
哀しみは、5年後、10年後、20年後に不意にやってくるのかもしれないのだ。
哀しみは封印することが出来るもの
封印することで、今を乗り越えていくことが出来る。
いや、封印することでしか現実を乗り越えることができないのだろう。
自分が壊れてしまわないように、無意識に封印してしまうのだ。
封印された哀しみは、決して癒されることはない。
何も解決していない哀しみは、行き場の無いまま、ある日突然リアルにやって来たりする。
哀しみは忘れたころにやって来るのだ。
でも、映画はラストで我々を救ってくれる。
はっと息を飲み、呆然とし、そして深く納得し、涙は知らずに流れる。
映画は、しばし現実を忘れさせ、流れる涙は、現実の哀しみを癒すのか。
ところで、この手の繊細な主題の作品は理解されない傾向にあるようだ。一般の批評を見ると殆どが的外れで悲惨な評価となっている。アメリカ本国でも全く評価されなかったようだ。確かに作品の表現における完成度は高いとは言えないが、むしろ問題は共感される仕掛けにある。
共感のハードル、意外に高かった。
つまりは、瓜二つの設定なんてあり得ない、と思われてしまうこと。
映画づくりは難しい!
スタッフ、キャストに同情するし、特に、アネット・ベニングの的確な表現と女優として老いをさらけ出す演技は見ごたえがあっただけに、この冷遇は残念なことだった。
MY評価:☆☆☆☆ (思い入れがあるので★ひとつおまけ)
2013/2015公開 アメリカ 93min 原題/The Face of Love(愛の肖像)
スタッフ 監督・脚本/アリー・ポジン
キャスト アネット・ベニング、エド・ハリス、ロビン・ウィリアムズ