NHK総合の土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」が2021年4月24日から始まり、昨日で第2話まで放送された。このブログでテレビドラマについて書くのはずいぶんと久しぶりだ。テレビドラマはどんなに良い出来であってもよっぽどのことがない限り、人々の記憶から消えていってしまうからだ。しかし、どうしても書きたいという気持ちになってしまった。それは、このドラマの中心人物の一人を演じた女優 鈴木杏にいたく感銘してしまったからに他ならない。そうなのだ。感動し、感心して、感銘という言葉さえ浮かんできてしまったのだ。
主演は松坂桃李で、脇に松重豊、岩松了、國村隼、安藤玉恵、渡辺いっけい、池田成志、高橋和也、温水洋一等々のそうそうたる顔ぶれで重厚なドラマかと思いきや、ちょっとブラックでコメディタッチの軽い雰囲気のドラマである。そんな中にあってストーリーはなかなかシリアスな内容をはらみ、鈴木杏はその部分を一手に引き受ける格好になっている。物語は彼女が主役の桃李君から去ってしまうところで2回目が終わり、次回の予告をみると別の展開になっていたようなので彼女の登場はこの先あまり期待できそうもないが……。
鈴木杏という女優を初めて見たのは確か岩井俊二監督の2004年公開の映画「花とアリス」だったと思う。若すぎるぐらいに若いにもかかわらす、その確かな存在感は年齢とのギャップもあり一種異様なほどに強烈な印象を残していた。しかし、その後、なぜか彼女を意識してみることはなかったように思う。今回の彼女の演技は、役どころとして強い覚悟と同時に様々に揺れ動く感情の繊細な心模様を余すことなく的確に表現していて、その女優力に目をみはらされた。本当にびっくりしてすぐにウィキペディアで調べてしまった始末だ。舞台で活躍していることは知らなかったわけではなかったが、去年の紀伊国屋演劇賞などの賞を独占しているような舞台をがあったことを知り、かえすがえすも後悔することになった。なんとそれは、あの栗山民也演出の一人芝居というではないか!迂闊にも去年のコロナ禍の状況で舞台情報にまったく無防備であったからだが、テレビでも放送していたというからもったいない話だ。「殺意 ストリップショウ」といういかにもそそられる題名の鈴木杏の一人芝居なんて、どれほど贅沢な舞台を見逃してしまったのか!今となっては地団太を踏むばかりである。
そう思うほどに、今回のテレビドラマ「今ここに……」の鈴木杏は良かったのである。
2021/5/2