アイルランドの独立戦争は、麦の穂をゆらす風なのか?
戦争は同志達の内戦も含み、熾烈を極め、密告、拷問、処刑が繰り返される。
昨日の友が今日の敵となり、互いに殺し合い、それがたとえ兄弟と言えども…
映画では、人の死があまりにも身近だ。いともたやすく殺し、殺される。
人が人を迫害し、追い詰め、殺す。圧倒的有利な立場に立つ時、人はまるで暴力に引きずられるかのようにヒステリックに暴力を行使する。
映画の視線は冷徹だが、同時にどこまでもやさしく人間を見つめる。
内紛に決裂するシーンは本来の議会民主主義の正しい姿のようだ。激烈だが見事なディスカッションを繰り広げる。どれほど激高してもひとりづつ挙手をしてから発言し、まわりは最後まで話し終えるまで邪魔はしない。正しい教育が沁み込むほどの伝統の凄さなのか。
議会制民主主義の伝統は、100年近くも前のアイルランドにすでに在ったのだ!
いったい、今の日本の何処にあるというだろう?
あの時吹いた穂を揺らす風は、すでに何処かに行ってしまったのか
戦争は姿かたちを変えてその後数十年も内紛を繰り返す。人は民族の主義主張のために、無残に死んでいく。人の想いとか、命とかの重みがわからなくなる。
ケン・ローチ監督が描いたことは、アイルランド内戦のある一場面のことだが、普遍的な映像は、いつか麦の穂をゆらす穏やかで平和な風を吹かせることができるのだろうか?
MY評価:☆☆☆★★★
2006年公開 英/アイルランド/独/伊/スペイン合作 126min
原題/The Wind That Shakes the Barley
監督/ケン・ローチ 、脚本/ポール・ラヴァーティ
キャスト/キリアン・マーフィー、ポードリック・ディレーニー、リアム・カニンガム、
オーラ・フィッツジェラルド
第59回カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞受賞