映画「ダンケルク」これが映画か!何度もそう思った!


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ここまで来たか!映画表現!

映画とは、かくも恐ろしい芸術なのか。

クリストファー・ノーラン監督が存在するこの世界では、虚構と現実の区別がつかない程の映画表現を獲得してしまったのだろうか。

映画は虚構の世界だが、或る意味ではリアルさを追求してきた歴史でもある。どこまで本物とか、現実のように見せるかを競ってきた。しかし、戦争の実体験のない世代の映画表現の世界では、もはや虚構が現実を追い越してしまったかのような錯覚すら感じてしまう。

戦争を俯瞰でとらえた巨大なスクリーンの世界の中に、さまざまな世界と物語がとらえられている。その瞬間に切り取られた時間に存在する人間には、それぞれひとりひとりに物語がある。母国へ避難を待つ40万人の兵士たち。桟橋に集まる様々な船。沈みかけてる大型船。燃える海。必死に泳ぐ兵士たち。空では爆撃機と戦闘機のバトル。同時に存在するそれぞれの戦いを生き抜こうとする兵士たちのサバイバルを、巧みな脚本で時間と場所を重層的に交差させ、生と死の境を明確に切り取っていく。


戦場で人が死ぬということの意味、理由、原因を観客に明確にしていく。彼は何故死に、もう一人の彼はなぜ死ななかったのかを見せていくのである。そこに居たから死んだ。そこを動くことが出来なったから死ぬという不運。必死に先を読んで生き抜こうとしたから生き延びた者と、同じように必死に生き抜こうとしたのに死んでいく者。その差に意味などはない。人間らしく生き抜こうとする者。人間性を放棄することで生き抜こうとする者。どちらが死んで、どちらが生きるかは運不運。生きるか死ぬかの境目にどのような意味や理由があろうとも、総ては無である、と映画は語っているかのようだ。戦争とはそうしたものであるということを描くこの映画は、同時にそれでも人間は素晴らしいと言い切る。戦争の愚かしさと人間性の肯定を同時に描くということは、すくなくともダンケルクという舞台を選んだ以上は、ハッピーエンドとなる側面の運命を合わせ持つ。そこが、生と死の不条理をテーマを持つこの映画の訴求力を損なうというアキレス鍵でもある。

もっとも超大作としての絶対的な使命はヒットして資金を回収することを思えば、優れた娯楽映画でなければならず、その意味でも見事なバランスだ。戦争映画の傑作誕生である。

MY評価:☆☆☆☆

2017公開   アメリカ   106min   原題/Dunkirk

製作・監督・脚本/クリストファー・ノーラン   

撮影/ ホイテ・ヴァン・ホイテマ  音楽/ハンス・ジマー

キャスト/フィオン・ホワイトヘッド、ハリー・スタイルズ、キリアン・マーフィー、
マーク・ライランス、トム・ハーディ、ケネス・ブラナー

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