香り高きセンチメンタリズム
ブルートーンの世界は孤独の香り
監督ジャン=ピエール・メルビルのブルートーンの世界が冷たく冴えわたる。
「サムライ」はフィルム・ノワールの代表作だが、メルビルとアラン・ドロンの代表作でもある。
アラン。ドロンの魅力は大きく二つに分かれる。
ニヒリズムと情熱である。
「太陽がいっぱい」「冒険者たち」に代表される情熱。
「高校教師」「さらば友よ」「仁義」そして「サムライ」のニヒリズム。
ニヒリズムの基調はハードボイルドだが同時にセンチメンタリズムの基本でもある。
もし、男らしさというものがあるとすれば、ハードボイルドほど似合うものはないだろう。
良い意味での男の本質だけがあって、余計なものが一切ない。
だから男は自分に無いものを求めて、あこがれるのだろう。
自己犠牲のラストシーンは伝説となり、以後様々な分野にコピーが氾濫した事を思えば、もはや古典なのだろう。
自己犠牲は甘美な残り香を漂わせ、見事に散っていく。
MY評価 : ☆☆☆☆★
1968年公開 仏/伊 105min 原題 Le samour
監督 ジャン=ピエール・メルビル
撮影 アンリ・ドカエ
キャスト アラン・ドロン、ナタリー・ドロン、フランソワ・ペリエ